なつきいろ

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「ほら、これはオマケだよ。」 そう言って、八百屋のおばさんに手渡された飴玉を、僕は喜んで受け取る。 「あんたは幾つになっても変わらないわね。もう二十歳だというのに、こんな飴玉が好きなんだものねぇ」 「ええ。知ってますか。飴玉は、疲れを取るんです。糖を一番手っ取り早く摂取できる優れものなんですよ。特に、おばさんのくれるこの飴玉は、格別だ。」 にっこりと微笑んだ僕に、彼女は「やだよ、もう。」と照れ臭そうに笑う。 「それよか、あんたも早くいい人見つけなさいよ。今時、男だっていき遅れる時代なんだから。」 「ありがとうございます。でも僕は、まだ一人が楽なもんで。当面、女はできそうにないですね」 「あらあら…。でも、街の女はみんな、あんたの話題で持ち切りよ。ま、その顔じゃ、仕方ないけれど。あたしも十ほど若きゃね、放っちゃおかないけれどね。」 腹を据えて笑った彼女に曖昧な笑みを残して、僕はその場を立ち去った。
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