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「よし、この辺りか。」
僕は立ち止まって飴玉の包みを開く。
丁度、ここから口に入れて、舌で転がしながら歩いて行けば、家に着くと同時に飴玉を完食できるのだ。
それが幼い頃から、街に出た時の唯一の楽しみだった僕は、早十五年もの間、続けている。
飴玉を口に入れようとして、僕は手を止めた。
道の脇で、女の子が泣いている。
「きみ、どうしたんだい?」
近付いて話し掛けると、女の子は涙で汚れた顔を上げて「カルストがいなくなっちゃった」と頻りに繰り返した。
それはまるで、壊れた玩具のように
いつまでも、声も涙も止まらない。
「ほら、泣くのはお止め。お兄さんが、飴をあげるから。」
「でも、カルストが…カルストが…」
「大丈夫。さ、食べてご覧。そして、お兄さんと一緒に探そうね。」
頭を撫でて、飴玉を差し出すと女の子は静かに泣き止んで、その身体には少し大きい飴玉を口に頬張った。
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