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「あら、また来たのかい」
「ええ。昨日、人参を買い忘れてしまって」
「そうかい。ほら、これはオマケだよ」
「ありがとうございます」
昨日と同じ時間に街へ出掛けた僕は、昨日と同じように飴玉を貰って来た道を引き返す。
「よし、この辺か。」
僕は飴玉の包みを開き、口へ運ぼうとして
女の子の泣き声を聞いて手を止めた。
「ナツキちゃん」
「あ、お兄ちゃん。」
ナツキは、ぱたりと泣くのを止めて僕を見た。
にっこりと笑って、手を差し出す。
「ん、これかい?」
差し出された小さな手の平に、僕はそっと飴玉を乗せてやる。
ナツキは嬉しそうに受け取ると、ニコニコしながらそれを頬張った。
「カルストは、見付かったかい?」
「カルストは…もういないから。」
唐突に俯くと、ナツキは短くそう言った。
「カルストはね、昔、ママに捨てられてしまったの。」
戸惑う僕をよそに、ナツキは続ける。
「でも、もういいの。カルストは、お兄ちゃんだから」
「…僕、かい?」
「うん!」
「僕が、カルスト…」
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