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くんくんと匂いをかいで、おそるおそる牛乳を飲む女
それが適温だとわかると途端に勢いをつけて飲みはじめる
「ふぅ…あたたまった」
「……えっと、じゃあ、どうぞお引取りください」
玄関の方へ腕をのばして、帰るように促す
彼女はキョロキョロと首を動かして、本棚に目をこらすとうれしそうに立ち上がった
ポケットかどこかに鈴をつけた鍵でもしまっているのか、チリンと透き通った音が響く
……鈴??
耳に心地いい音
本棚に立てかけてある本を一冊ずつ確かめるように指でなぞっている女の背後に声をかけた
「あんた、名前は?」
「……月子、素敵な名前でしょ?」
そーか??普通だろ
「まあ……そーっすね」
「でしょ?アタシの大好きな人がつけてくれた名前なんだー♪」
「そーっすか」
どうせ、父親とか母親とかなんじゃねえの?そういうのって……
「その人ね、お月様が好きなんだって
なんだか、月からも誰かがこっち見てたらおもしろいな~とか思うんだって」
俺はその話をきいてちょっと吹き出した
そんな事考えるバカは俺だけじゃねーんだな
月子は一冊の本を取るとそれをパラパラとめくって、何かを探しているようだった
くりくりの目がキラキラと光っている
目がかゆいのか、にぎった右手で目をゴシゴシとこすって、こちらを見るとまた笑った
変な女
そんな女に警戒心を解きはじめてる俺もたいがい変だけど
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