序章

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翡翠の屋敷は身の回りの世話をする女房がいない。 というか、翡翠がけして雇わないのだ。 下級身分の貴族でも、そのお金がないわけではない。 むしろ使わないので、たんまりともっているはずだ。 以前、貯金しているのは何かお高い欲しいものでもあるのかと聞いてみたが、彼からは特にそんなものはないと、さらりと返された。 あの時は、ただそうなのかと半信半疑だったが、最近になってわかった。 彼には執着というものがない。物や人に対してはもちろんのこと、自分に対してさえ、まるで執着がない。 ただ、なんとなく生きているだけ。 .
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