蒼色街灯

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ああ、それは太陽のような声でした。 優しく暖かな懐かしい音色でした。 今でも思い返すたびに優しい気持になる声でした。 お座りになりませんか しばし、私はぼぅっとしていたようですが、彼女は笑って再度座るよう促してくれました。 窓からは夏のよな陽射しが燦々と降りそそぎ、緑がひかり輝いてみえます。 古びていた車内さえもつやを増してキレイに見えます。 全てがクリアでした。 私は話しました。 黒い人や烏にあったことを。 彼女は話しました。老婆と緑の猿の話を。 そして二人とも記憶が定かではないことを。 私たちの立場は似通っていたのです。 今では、それも分かる気がしますが。 私たちはお互いのことを話しました。 ああ、なんて楽しいのだろう 私たちが話している間にも窓の外の季節は春から夏へ、そして秋へと移り変わっていきました。 雲が高くそびえ、やがて雷が鳴ったあと雨が降り、寒くなり、雨が上がっても、もう気温は元の暖かさには戻りませんでした。 さむい 私はぶるっと震えました。 窓の外をみると枯葉が舞っておりました。 そう、秋がきたのです。
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