蒼色街灯

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これを 突然、彼女は私に朱色の勾玉のネックレスを渡したのです。 予感がしました。 幸福は続かない 幸せな時は戻らない 彼女とは、二度と会うことはない 一期一会なんてくそくらえだ そのとおり 暗雲が垂れこめ、車内の明かりが明滅し、 そして明かりは消えました。 そのとき、 窓が突然あき、雨風が車内に吹き込みました。 彼女のちいさな声が聞こえた気がきましたが、 猿の甲高い叫び声と鳥の羽ばたく音も聞こえた気もしました。 私は、暗闇の中で、焦り必死に窓を閉めたのです。 やがて、明かりがつきました。 しかし、そのときには彼女の姿はなかったのでした。 私は、 彼女の名前さえも聞いていなかったのに 私は…自分の首に下がった朱色の勾玉を見つめ、次の客車へと向かいました。
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