蒼色街灯

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客車は前と変わらなかった。 唯一違っていたのは人が居たことでした。 人が一人座っていたのです。 黒い人でした。 黒煙を人型に固めたような人で、外を眺めておりました。 挨拶をしなければ ごきげんよう これはご丁寧に ごきげんよう 黒い塊の中、目だけが白眼に黒い瞳がはっきりわかり黒い人の意志をハッキリあらわしていました。 喋るたびに口と思われる箇所から黒煙が立ち昇りました。 お若い人よ この列車が何処に向かっているかご存知か? いいえ。知りません。 わたしは思うのですよ これまで私は世の汚れを拭ってキレイにしてきました 気づいたら、このような姿になっていたのデスよ 汚れを拭いた雑巾の末路どんななのか… 何処に行くのか ふっ、まあ…旅行は久しぶりです せいぜい楽しみますよ 黒い人は笑ったように見えました。 そして、黒い人は再び外を見ました。 外には一面の草原と青空が広がっていました。 一路平安。 私は、次の客車に移りました。
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