失われたもの

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コンコン。 「入るわよ」 そう言い、母親が病室に入ってきた。 「遥斗!目が覚めたのね。…どうしたの?二人とも、ずいぶん暗い顔して」 「なぁ…母さん。俺、もう走ったり出来ないって本当?」 俺は、母さんにそんなことないと否定してもらいたくて聞いた。しかし― 「……残念だけど、もう激しい運動は出来ないみたいよ」 母さんは、そう言うと桜と同じ様に苦し様な、悲しい様な表情をした。 「…そう。わかった」 現実から目を背けたくて俺は布団をかぶった。 「でも大丈夫よ。例え運動が出来なくなっても、生活していくには問題ないから。だから遥斗、気に―――」 「わかったって言っただろ!!もう帰ってくれよ!」 母さんの話を聞きたくなくて俺はつい怒鳴ってしまった。 俺のそばにいた桜がビクッとして母さんの隣にいってしまい、自分がしたことに気づいた。
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