複雑な風車

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「あら。美鈴ちゃんじゃないかい。」 「こんにちは、お婆ちゃん。一緒に折り紙しにきたよ」 「ありがとうね。美鈴ちゃんがいると華やかになるから嬉しいねぇ」 「そんなことないよ?お婆ちゃん可愛いもん。お爺ちゃんたちに人気でしょ?」 「そんなことないさね。おや?そこのカッコイイお兄さんは見ない顔だね」 そういい俺の近くまでやってきた。 「あっ、神宮寺遥斗といいます。最近入院しました」 「そうかい。早く良くなるといいね。ここにいるのは私たちみたいな年寄りだけで充分ね」 「なに言ってるのお婆ちゃん。お婆ちゃんはまだ若いじゃない」 「あっはは。若くなんてないさ。最近は死んだじいさんの夢ばかり見る。きっと呼んでいるにちがいない」 「もう、お婆ちゃんったら。そんなこと言っちゃ駄目だよ」 「いいんだよ。美鈴ちゃんも、この年になればわかるじゃろう」 「むー。ねぇ、遥斗くん。どうしてお年寄りの人たちは死が怖くないんだろうね…」
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