複雑な風車

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いつまでそうしていたのだろう。 数秒か数分か。美鈴はようやく泣き止んだ。 「…えへへ。ごめんね」 「ううん。大丈夫」 「へ、部屋に戻ろう?また、私が押してくから」 「そうだね。戻ろうか。ただし!」 「え?な、なに?」 「ゆっくり押してってね」 「ふふ。わかってます」 美鈴に車椅子を押してもらっている間、会話は一切なかった。 お互い雰囲気的に喋ってはいけないような気がしたからだ。 「はい。着いたよ」 「ありがとう。美鈴も早く部屋に戻って休んだ方がいいよ?」 「うん。そうするね。バイバイ、また明日」 「また明日」 俺は部屋の前に美鈴の姿が見えなくなるまでいた。 大丈夫だろうか。明日は何事もなかったように話をしよう。 そうするのが一番良いかは分からないけど。今できることをやろう
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