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「あれっ、あんた頭が縮んでない?」
万力のような手で締め付けられた僕の頭を見て静が心配そうに声をかけてきた。
「大丈夫、九々は数えられるから。」
僕は心配そうな静にそう答えた。
「あっ、何だか潮の香りがしてきたね。」
「ねえ、聞いてる?」
まるで独り言を言ったかのような錯覚に陥り、僕は静に軽く突っ込んだ。
僕達は家から港へと続く道を歩き街をぬけまもなく港へたどり着く頃だった。
辺りには僕と同じく卒業した魔王アカデミーの生徒がちらほら見える。
「あっ、あれじゃない。アレフが乗る船。」
間もなく港が見えようとした時、姉さんが船を見つけた。
シュツット=ヒンデンブリュグ号
黒い巨大な帆船が僕の目にも飛び込んできた。
「わあっ!!大きいや!!」
「なに、そのハイテンション?」
僕は姉さんに先に見つけられた悔しさもありわざとらしくはしゃいでみせた。
「うわっ。キモッ。」
そんな僕を見て、姉さんは育ちの悪さが分かるような悪態をついた。
僕はそんな言葉を無視するかのように更にはしゃいだ。
ドテッ!!
はしゃぎすぎた僕はその場で盛大に転んだ。
「びええええぇぇぇ!!!」
本気で泣いた17の春。
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