殺意の霧

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「達也、こっちだ」 「……和成?」  身震いする程の赤い闇の中から、ぼんやりと浮かび上がる弟の姿を見つけた俺は、急に意識が鮮明になった。  赤い霧のようなものが晴れて、月明かりが地面まで照らしている。  見知らぬ風景だと思っていたが、よく見ればここも見覚えがある。  さっきまで俺を呼んでいた声も気配も消えている。 「和成……なんでここに?」 「達也の匂いがしたから来てみたんだ」 「匂いって……俺そんなに匂うのか?」  弟である和成は、俺と違いやたら鼻がきく。勘が働いてるのか、どっちなのかはわからないが。
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