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私は夏休み、一人のおじさんを見つけたら。
そのおじさんは公園の噴水のふちにぽつんと腰かけていた。
なんだかぼんやりしているようで、私がいうのもなんだけどかぼそくて。
おじさんのゆるく波うった長めの髪が熱風にふかれ、ゆらゆら揺れていた。
…何処かに飛んでいきそうだ。
私はこの人を、どこかで見たような気がした。
「きみ」
はっとする。意識がおじさんに戻る。
私はどれだけおじさんのことを見ていただろう。
気が付けば、おじさんも私を見ていた。
昼下がり、まだまだ暑い。
「あ、すみません」
私は訳もわからず謝った。
「いや、いいんだ。暑いだろう、こっちに座ったら」
そう言うとおじさんは、噴水のふちを軽くたたいた。
「おじゃまします」
私はふざけてそう言った。
「はい、どうぞ」
おじさんもまるで、自分の場所であるかのように言った。
私達は可笑しくなって、少しだけ笑った。
おじさんは笑うと、ちゃんとこの世の人みたいだった。
あぁ、なんだ生きてんじゃん、と私は実は安心していた。
どのみち私はこの後、おじさんが人間でないと知る。
まぁ、それはどうだっていいんだけど。
そんな夏の話なんだ。
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