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「はい、どうぞ」
「ありがとう」
私達は店の前のベンチに座る。
サンジェルマンにアイスを買ってもらって、思い出すのはおばあちゃんのことだった。
私のおばあちゃんもこうして、よくアイスを買ってくれたから。
しかも、同じ味。
ちょっと酸っぱい、山ぶどう味。
私のおばあちゃんというのは、母方の祖母で、考えてみれば私はおばあちゃんっ子だった気がする。
小学生の夏休みには、いつも、おばあちゃんの家に行っていた。
おばあちゃんも忙しい両親の代わりに、私の面倒をよくみてくれた。
優しかったおばあちゃん。
おばあちゃんは今、壊れたみたいになっている。
壊れたみたいになってしまったので、病院にいる。
お母さんは言わないけど、おばあちゃんは心の病気だ。
おばあちゃんには夏休み以外、家に一人だ。
おじいちゃんは、私が顔も覚えてない頃に他界した。
きっと、おばあちゃんは寂しかったのだ。
おばあちゃんは壊れてから、私が病院に行っても上の空で、ずっとなにか呟いている。身体もずいぶん痩せてしまった。小さな身体。
私はそんなおばあちゃんを見ていられず、そのうち病院にいけなくなった。
私のおばあちゃんは、もういない。
「アイスが溶けるよ」
サンジェルマンの声ではっと意識を戻す。
滴れそうになっていたアイスをなめとった。
「…冷たぁい」
久しぶりに食べた山ぶどう味のアイスは、やっぱり少し酸っぱかった。
おいしい。
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