出会う夏休み

7/8
前へ
/8ページ
次へ
「君は、時間を戻せたらなにをしたいかな」 サンジェルマンが、急にそんなことを聞くので私は笑ってしまった。 「タイムマシンってこと?」 「まぁ、そんなものかな。だけど時間をさかのぼるのにあんな機械はいらない。…おっと。それで、君はなにがしたい?」 サンジェルマンがあまりに真剣な顔をするので、今度こそ私も真面目に考える。 時間をさかのぼれたら。 私はいつもひとつだけ、心残りなことがあったのを思い出した。 小学生の夏休み。おばあちゃんの家。 その当時流行っていた魔法使いの映画(確かタイトルは『魔法使いと金のすず』)を観にいこうと、おばあちゃんと約束したのだ。 お母さんが迎えにくる一日前だった。 それが結局、私が寝坊してしまって行けなかったのだ。 今思えば、おばあちゃんと過ごした最後の夏休みだった。 あれから、おばあちゃんは壊れてしまったから。 もし1日だけ戻してくれるなら。 私は、あの夏の日へ戻りたい。
/8ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加