水面

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水面

信じることで 裏切りを知り 疑うことで 孤独を手にした 無情を装い 歩くけど 真実の爪は 何度でも胸を裂く 細かな記憶でさえ 鮮色に塗られて 忘れ得ぬ涙は 熱い導線となり 臓(ぞう)の裏を流れ落ちて 腹の底に 深淵(しんえん)の泉を湛(たた)えている 青くて透明な闇に 手を触れた それは 戸惑いに似た安らぎで 沈んでしまっても 構わないと願った 黒で塗りつぶしても 忘れ去ることは許されない 波紋(はもん)は銀に煌(きら)めいて 今宵(こよい)も 水面(みなも)を震わせている
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