4人が本棚に入れています
本棚に追加
『待ってたのが気に入らんのか?』
現場監督こと健が、私の顔を覗き、ニヤッと笑う。
『違う。今、切り替え中』
『何やそれ。やっぱ、お前変。』
と、私の頭をポンポン叩く。
だって、気持ちの切り替えしたいじゃない。
彼氏の前では、かわいい彼女でいたいし。
『待っててくれたの、嬉しかった。でも、予定あったんじゃない?』
『ん?何で。』
『今日中に終わらせるって、言ってたから。』
『ああ、違う違う。お前に用事があって。』
ポケットから、小さな輪っかを取り出す。
リング?
『正月に挨拶に行くから。』
『へっ?』
『お前んちに挨拶に行くから。』
それって?まさか。
『悪りぃな。クリスマスイブもクリスマスも仕事だから、だいぶ早いけどクリスマスプレゼント。安物だけど』
健は照れたように頭を掻きながら私の手のひらに小さな輪っかを乗せる。
金色の、シンプルなデザインの指輪。
『挨拶って‥‥。』
『結婚、嫌になった?』
手のひらの輪っかを見て固まった私に訊いてくる。
これ、婚約指輪?
プロポーズして四年も待たせて。
『待ってた。何時言ってくれるかなって。』
私は指輪を左手薬指に嵌めた。
『ありがとうね。嬉しい』
健はニッコリ笑った私を見て、安心したのかフウーっと息を吐いてから、私を抱きしめた。
『奈緒、待たせたな。』
私の左手を取って、薬指に嵌めた指輪にキスをした。
『俺を待っててくれてありがとう』
賑やかな街の中、イルミネーションの光がキラキラ輝いていた。
皆様にも、サンタさんから素敵なクリスマスプレゼントが届きますように。
最初のコメントを投稿しよう!