第二章

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坂口さんの声が悔しそうにこもる。 それを聞いて、胸が痛くなった。 「本当に、大丈夫です。……私も、きちんと締め切りに間に合うよう頑張りますから。」 『…ありがとう。締め切り、1日くらいならなんとかするから…自分が納得できる作品を書いてくれ。』 「坂口さん……」 締め切りを1日延ばすなんて、実はとても大変な事だ。 それでも坂口さんはそう言ってくれた。 灰谷さんを担当にしてしまった事と、自分の指導力不足のお詫びだと言って。 坂口さんは悪くない。 私のメンタルの弱さがそもそもの原因なのだから。 …だから私は密かに、『本来の締め切りの一日前に仕上げる』という目標を自らに掲げる事にした。 とてつもなく苦しい日々になる事が分かっていたけど、それが私の作家としてのプライドのような気がしたから。 「大変だあぁあ!!!間に…間に合わない!!」 3日後の朝。 焦って着替えながら、私は絶叫していた。 もうタクシー乗って空港向かってなきゃいけない時間なのに…徹夜で夢中になって小説を書いていたので、時計を見る事すら忘れていたのだ。 克也を見送りに行く約束してたのに~! 私はカバンを寝室まで取りに行く暇も惜しみ、財布と紙袋を持ち家を飛び出した。
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