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良かった間に合った!!
と安心したのも束の間で、私は全力疾走しながら克也を探し始めた。
ようやくその姿を捉えたのは、搭乗口へ向かう通路の手前だった。
「克也!!」
慌てて名前を呼ぶと、克也が振り返って笑う。
「遅いよ。来ないかと思った。」
「ごめっ…急いだんだけどっ…タクシーの運転手さんもっ頑張ってくれたんだけど…」
走ったせいか息が荒い私を気遣うみたく、克也が頭を撫でてくれた。
それだけで胸が温かくなって、その手に頬をすり寄せる。
「…北海道は…寒いんでしょう?風邪とかひかないで、温かくしてちゃんとご飯も食べてね。」
「ああ。年越しには帰ってくるから。」
「…うん。」
「…」
もっと喋りたい事はたくさんあるのに、お互いに言葉にならない。
気を緩めたら泣いてしまいそうで、私は笑顔を作った。
「浮気するなよ!とか言わないの?」
「…できないでしょう。楓、俺に夢中だもんね?」
そう答えるのは分かってたけど。
あまりにも自信たっぷりな克也がおかしくてたまらない。
「クスクス。そうだね、絶対無理。」
肩を揺らして笑っていたら、不意に克也が私の目元に指で触れた。
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