第1章「懐かしの町」

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俺の頭の上でなにやら蠢いている 気配がする。 たぶん、誰かが俺の顔を覗いてる。 ???:「……くん。」 またか…… この声と雰囲気と、 ???:「…みーくん。」 今、このあだ名で俺を呼ぶのは… 御影:「…ほら、来いよ。」 涙で目を潤ませてる紗雪しかいない。 紗雪:「いつもごめんね…。」 御影:「気にすんな。」 俺が紗雪に背を向けるように 布団の端に移動すると、 すかさず紗雪がもぐりこむ。 隣の家から聞こえる男の怒声と 女の悲鳴は、俺の背中に 震える手を当てるこいつを ビビらせるのには十分過ぎるほどだ。 それから5分後。 紗雪の寝息を確認して、 俺は眠りに墜ちた。 ――人は誰でもそれを追い求める。 それがなんなのか、 いつ見つかるのか、 誰にも見当はつかない。 自分が追い求めていることにすら 気づかない人もいる。 それでもやっぱり、見つけた人の顔は 笑っていて、満たされている。 それは案外、ふとした瞬間に 見つけることがあるという。 そういうもの、なのかもしれない―― なんとも香ばしい、 焦げ臭い香りが俺の鼻を刺激する。 食材を包丁で切る音が… トン………トン……… トン………トン……… 味噌汁の沸き立つ音が… ジューー………… ジュー? 御影: 「…って、うぉぉぉおおーいッ!!!!」 紗雪: 「えっ?あ!わっ、どどどうしよう!!」 俺は掛けていた布団を投げ飛ばしつつ 慌てて駆け寄り、コンロの火を消して 水分の蒸発しきった味噌汁を眺めた。 御影: 「あのなぁ…。」 紗雪: 「ごご、ごめん。昨晩のお礼を、  と思って…。」 御影: 「お礼をしてくれるのはありがたいが、  せめて自分の出来ることにしてくれ。」
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