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俺の頭の上でなにやら蠢いている
気配がする。
たぶん、誰かが俺の顔を覗いてる。
???:「……くん。」
またか……
この声と雰囲気と、
???:「…みーくん。」
今、このあだ名で俺を呼ぶのは…
御影:「…ほら、来いよ。」
涙で目を潤ませてる紗雪しかいない。
紗雪:「いつもごめんね…。」
御影:「気にすんな。」
俺が紗雪に背を向けるように
布団の端に移動すると、
すかさず紗雪がもぐりこむ。
隣の家から聞こえる男の怒声と
女の悲鳴は、俺の背中に
震える手を当てるこいつを
ビビらせるのには十分過ぎるほどだ。
それから5分後。
紗雪の寝息を確認して、
俺は眠りに墜ちた。
――人は誰でもそれを追い求める。
それがなんなのか、
いつ見つかるのか、
誰にも見当はつかない。
自分が追い求めていることにすら
気づかない人もいる。
それでもやっぱり、見つけた人の顔は
笑っていて、満たされている。
それは案外、ふとした瞬間に
見つけることがあるという。
そういうもの、なのかもしれない――
なんとも香ばしい、
焦げ臭い香りが俺の鼻を刺激する。
食材を包丁で切る音が…
トン………トン………
トン………トン………
味噌汁の沸き立つ音が…
ジューー…………
ジュー?
御影:
「…って、うぉぉぉおおーいッ!!!!」
紗雪:
「えっ?あ!わっ、どどどうしよう!!」
俺は掛けていた布団を投げ飛ばしつつ
慌てて駆け寄り、コンロの火を消して
水分の蒸発しきった味噌汁を眺めた。
御影:
「あのなぁ…。」
紗雪:
「ごご、ごめん。昨晩のお礼を、
と思って…。」
御影:
「お礼をしてくれるのはありがたいが、
せめて自分の出来ることにしてくれ。」
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