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紗雪:
「う、うん。ごめん。」
テーブルの上に1皿、綺麗に出来た
玉子焼きが置いてある。
俺はテーブルに近づき、1つ手づかみで
口に運ぶ。
背後からの熱い視線を感じながら、
食べた玉子焼きは、ふんわりとして、
とても美味しく出来ていた。
紗雪:
「…………。」
皿にある玉子焼きを全て食い終え、
俺は玄関に移動する。
御影:
「さて、朝飯食いに行くぞ。」
紗雪:
「ど…こに?」
御影:
「そこのファミレスだけど?」
紗雪:
「…感想は?」
ちょっとだけむくれた顔で
紗雪が俺に聞く。
俺は玄関で靴を履きながら、
御影:
「ファミレスの玉子焼きは、
もう食えん!ってところだな。」
紗雪:
「…え!?なんで?」
御影:
「なんでだろうな。それより、
早くしないとおいていくぞ。」
そう言って、外に出る。
紗雪の呼び止める声を背に、
俺はアパートの階段を下り、
ファミレスに向かう。
紗雪:
「待ってよぉ、み…みかげぇ~。」
紗雪が慌てて追いかけてくる。
御影:
「早くしないとおいていくって
言っただろ。」
紗雪:
「だって…まだお母さんに
朝ごはんいらない、って
伝えてないのに。」
こいつの親はさぞ幸せだろうなと思う……
いや、絶対に幸せなはずなんだ。
こんなに親が好きで真面目な子供は
そうはいない。
まあちょっと、天然すぎてどうしようもない部分もあるが…。
紗雪が昔のように俺の顔を
覗きこんでくる。
紗雪:
「どしたの?考え事?」
御影:
「なんでもねーよ。」
紗雪:
「…ん~、そう?」
御影:
「ああ。」
俺は紗雪の歩幅に合わせようと、
ゆっくり歩き、
紗雪は俺の歩幅に合わせようと、
必死で早歩きをする。
そういえば、昔からこんな感じだった。
幼稚園で初めて会った日から、
紗雪はいつも俺の後をついてきた。
はぐれることのないよう、
お互いに歩く速さを調節して。
その度に、俯いて歩く紗雪の頭と
俺の背中がぶつかっていた。
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