第1章「懐かしの町」

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紗雪: 「う、うん。ごめん。」 テーブルの上に1皿、綺麗に出来た 玉子焼きが置いてある。 俺はテーブルに近づき、1つ手づかみで 口に運ぶ。 背後からの熱い視線を感じながら、 食べた玉子焼きは、ふんわりとして、 とても美味しく出来ていた。 紗雪: 「…………。」 皿にある玉子焼きを全て食い終え、 俺は玄関に移動する。 御影: 「さて、朝飯食いに行くぞ。」 紗雪: 「ど…こに?」 御影: 「そこのファミレスだけど?」 紗雪: 「…感想は?」 ちょっとだけむくれた顔で 紗雪が俺に聞く。 俺は玄関で靴を履きながら、 御影: 「ファミレスの玉子焼きは、  もう食えん!ってところだな。」 紗雪: 「…え!?なんで?」 御影: 「なんでだろうな。それより、  早くしないとおいていくぞ。」 そう言って、外に出る。 紗雪の呼び止める声を背に、 俺はアパートの階段を下り、 ファミレスに向かう。 紗雪: 「待ってよぉ、み…みかげぇ~。」 紗雪が慌てて追いかけてくる。 御影: 「早くしないとおいていくって  言っただろ。」 紗雪: 「だって…まだお母さんに  朝ごはんいらない、って  伝えてないのに。」 こいつの親はさぞ幸せだろうなと思う…… いや、絶対に幸せなはずなんだ。 こんなに親が好きで真面目な子供は そうはいない。 まあちょっと、天然すぎてどうしようもない部分もあるが…。 紗雪が昔のように俺の顔を 覗きこんでくる。 紗雪: 「どしたの?考え事?」 御影: 「なんでもねーよ。」 紗雪: 「…ん~、そう?」 御影: 「ああ。」 俺は紗雪の歩幅に合わせようと、 ゆっくり歩き、 紗雪は俺の歩幅に合わせようと、 必死で早歩きをする。 そういえば、昔からこんな感じだった。 幼稚園で初めて会った日から、 紗雪はいつも俺の後をついてきた。 はぐれることのないよう、 お互いに歩く速さを調節して。 その度に、俯いて歩く紗雪の頭と 俺の背中がぶつかっていた。
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