第一章

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場転・ニーベル本社廊下 エキストラ女「はじめまして新入社員さん。わたしはあなたの教育係」 リヒト「はじめまして、リヒトです。よろしく」 エキストラ女「未経験に研修前だそうだけれど、ニーベルのことはどこまでご存じ?」 リヒト「現金輸送、ノンバンクのATM対応や現金装填、セキュリティ機器の販売を主に、最近では生命に危険が及ぶ可能性のある人物へのボディーガード派遣に力を入れていると――お聞きしました」 エキストラ女「基本的に実力主義よ。死んでも文句は言わないでね」 リヒト「ご覧のとおり、人の命の価値は平等だと言える時代に生きてはいません。警備員を名乗るなら、クライアントの依頼と自分の安全、天秤にかけるまでもないでしょう?」 エキストラ女「よくわかっていること。……しかしあなた、妙な時期に入ってきたわね」 リヒト「急な話で、ご迷惑をおかけしました」 エキストラ女「需要にたいして人手は常時不足してる業界よ、ここは。安い命は入れ替わりも激しいの。あなたはどうかしら」 リヒト「さあ……いずれにせよお声をかけていただき、社長には深く感謝しています――あなたのような教育係をつけてくださったことにも」 エキストラ女「お上手ね」 リヒト「社交辞令です」 エキストラ女「素直な年下は嫌いじゃないわ。……あら、資料を忘れたようね。ちょっとそこで待っててちょうだい」 エキストラ女退場 リヒト(M)「……それにしても簡単に入社できるもんだな。単なる警備会社が、BNDだの諜報員だのに警戒する道理もねえんだろうけど……。 まあこの任務は“ニーベルに入社して信用を得ろ”ってだけで、大して難しいもんじゃない、気長に真面目にやりゃいいんだ。 だがもうひとつのほうは厄介だな……」 リヒト(M)「“カルマ街の夢遊病者を殺害せよ”」 リヒト「……意味がわからん……」
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