序章

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ノノン(N)「約100年まえの、世紀末のことでした。 世界の中心だった合衆国で、大規模な偽札事件が起きました。 英国の原子力発電所が、過去最悪の炉心溶融(ようゆう)事故を起こしました。 中国全域で、致死率89パーセントの急性ウイルス性感染症が蔓延しました。 ……あっという間に、世界は秩序をうしないました。 異常気象や各地の大災害も追いうちのように襲いかかり、停止した供給に産業は凍りつきます。 暴動やテロも相つぎましたが、叫んでも嘆いても、あふれる札束はあしたの食事に変わりません。 だれが信じるべき味方で、だれが倒すべき敵なのか、だれにもわからないまま。 生きるための隣人同士の奪いあいは、やがて最悪なかたちで経済を支える、泥沼戦争となりました。 最初の核が落とされるまでわずかに2年。いつしか元号のかわりに名づけられたのは、黄昏の時代。 世界の終わりが、はじまるのだ――と」
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