第一章

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イェシカ(M)『こっちを見てって、……言えなかったんだ』 イェシカ『とうさん!』 イェシカ(M)『赤い火、赤い軍服。ゆらめく影さえひどく遠い、父親の背中。 あのひとたちみたいに、夢のなかに生きることをえらぶの。 言わなければよかったんだ、こんなことになるのなら。 リボンのついたプレゼントも生まれてきた日のキスも、眠れない夜の子守唄も、オレはまだ知らない』 イェシカ『なにを、なんで、……逃げないの……』 イェシカ(M)『赤い火、赤い髪。化粧をして、きれいな服を着て火をつけたのは、かあさんとねえさん。 オレのしあわせオレの愛、オレのつながり、帰る場所。 どれだけでも奪ってかまわないから、気づけないところで泣かないでくれ。 ほんとうは森なんか、どうなったってよかったんだ』 ユリアン『父親だ――それでも』 血まみれのユリアンが、イェシカの腕を引く。 イェシカ『いや、……いやだ、いやだつれていくな、オレを助けるな、えらぶのはオレだ!』 ユリアン『あれは君の父親だ』 イェシカ(M)『ああ、ああ……ああ。バカだなオレの、』 リヒト『――エンディア』
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