第一章

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リヒト(N)『連邦情報局、通称“BND”は、国外の政治経済軍事外交などに関する情報を収集し分析評価する、ドイツ最大の連邦施設である。 冷戦期の創立当初は対ソ連の諜報活動が主だったが、1万近い人員を抱えるいま、対象は北から東…… 黄昏の時代において不自然な安寧を誇る日本帝国へ。 BNDの諜報員であり、連邦軍の左官でもあるオレは恰好ばっかり大層だけど、やってることは平たく言っても言わなくてもスパイ、だ』 場転・ドイツ国旗が飾られている長官室。 反対むきのチェアに長官が座っている。 リヒト『こんこん、しつれいしまーす。ユリアンが寂しくて死んじゃいそうって聞いたから、リヒトさんが来てやったぞ』 ディートレイ『リヒトおお!?? 長官に何いってはるのん!』 ユリアン『遅いぞボロ雑巾ども。この私が寂しくて死ぬところだった』 リヒト『よーう』 ユリアン『おーう』 ディートレイ『……しまった、この長官むだにノリがいいんやった……!』 リヒト『で、なにか用ですか。もしかしてランチ代経費で落としたのバレましたか?』 ユリアン『ボロ雑巾ごときが8万のランチなんぞ3億年早い、バレンでもくわえていろ。 そして残念ながら用件はそれほど平和的なものではない。 ……さてディートレイ、君は下がれ』 ディートレイ『あ、はぁい。リヒトくうん、がんばってー』 ディートレイは退室。 ユリアン『……私がじきじきに下す時点で、いかに不肖のボロ雑巾でもその重要性を理解できていると思うが、長期の任務だ。 任務詳細はこの番号のベルサイドから受け取り、すみやかに作戦行動へ入れ。よもや失敗などすることはないだろうが、健闘を祈っている。なにか質問は』 リヒト『へえ、棒読みな激励ドウモー。質問、質問ってまだなにも聞いてねぇんだけど……あ』 ユリアン『なんだ』 リヒト『ユメ見たんだけどよ、5年まえの。やっぱりアンタだったんだなあ、エンディア』 ユリアン『……なにを言っているのかわからんな』 リヒト『じゃあだれにあげちゃったんだよ、その――』 ユリアン『おおおっーと痔の発作が……、一刻もはやく中にそおっと注入しなければな。 ……む、なにを呆けている、退室したまえ』 リヒト『えー……。ま、御意のままに、ハイル・エンディア』
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