第一章

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場転・ホテル。 ノートパソコンのキーボードをたたくリヒト。 リヒト(M)『……じっさいのスパイというやつは、映画やドラマみたいにカッコイイものでもハデなものでもない。 青いネコタヌキもびっくりな道具なんざ持っていないし、自分がなんのためになにをしてんのかわかんねぇことさえある』 (SE)荒々しく扉が開く ディートレイ『まぁあたおっきい任務もらったんやってええ!!! ぼくけっこうな間なんも任務まわってきてへんのやけど、なんでなん! おしえてマヨーア!』 ※意味・少佐(リヒト) リヒト『あ゛ーっせぇな。てめぇは命令聞かねぇから干されてんだろ。こないだマジギレして、下士官半殺しにしたばっかじゃねぇか二重人格が』 ディートレイ『えー! そないなことしてへんし! 自分より下の子ぉを半殺しとか、ぼくがするわけあらへんやん』 リヒト『そーれーが二重人格だっつってんだよ……まぁ、あれであのガキも、お前をブラックセプテンバー呼ばわりしなくなるだろ』 ※黒い9月。パレスチナの過激武装組織でミュンヘンオリンピック事件における犯人。 ディートレイ『よくわからへんけど、あのお坊ちゃん、歴史苦手やったんやろか……。つぅか、なにしとるん?』 リヒト『面接のー予約』 ディートレイ『……はぃい?』 リヒト『ニーベルとかいう会社に入社すんの。正規の採用は無理そうだがまぁ、エース諜報員を舐めんなよ――と』 ディートレイ『はあ? ニーベルつぅたら要人貴賓の身辺警護とかプロ株主の対策を、いろぉんな国の政府だの企業団体だのから請け負う警備会社やろ? なんでリヒトくんがサラリーマンにならなあかんのん』 リヒト『知らねぇよ』 リヒト(M)『……じっさいのスパイというやつは、映画やドラマみたいにカッコイイものでもハデなものでもない。 青いネコタヌキもびっくりな道具なんざ持っていないし、自分がなんのためになにをしてんのかわからねぇことさえある。 ただ言えるのは、胸くそ悪ぃシゴト、ってことだけだ』 ディートレイ『……どーでもええけど、リヒトくん全体的に不良やから、気ぃつけてな』
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