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「結構大きかったですしねー。この辺じゃあんまり見ないサイズだったし、叩いても硬かったし。ありゃいい育ち方してるわ」
「だろう? 勝手の分からない旅人にあんまり任せたくないし、普段は領主様の兵士さんたちがやってくれるんだけど……あいにく今は出払っちゃっててね」
だが放っておいては農作物に被害が及び、人的被害も危ぶまれる。
困った街の人々で相談して依頼を出し、たまたま通りかかったエリアが名乗り出た。
魔道士であり打撃武器の杖を扱う彼女なら、と請け負いを認めたのだ。
「あたしは全然大丈夫ですからお構いなく。ちょうど路銀も稼いでおかなきゃならないときでしたから、渡りに舟っていうか」
エリアは指についたパイ生地を払い、紅茶を飲んだ。
ナプキンで口元を拭い、ふっと甘ったるい吐息をもらす。
「それに進もうにも、通行止めじゃ仕方無いですからね」
一昨日にこの街に着き、首都まではもう目と鼻の先。
きちんと整備された街道を進めば歩いても2、3日で辿り着く距離である。
当初、エリアもそのつもりであった。
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