‡一章‡

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  「ふーん……はっ!」 エリアは皿に残る食べかけのアップルパイを見る。 「大丈夫だよ。リンゴはここで作ってるから、遠慮なく食べな」 「ああ、よかったぁ……」 ホッとしてまた食べ始める。 ここに泊まってからほぼ毎食のように食べている身として、少し不安になったのだった。 「でもそんなに危ない魔物なんですか?」 領主の兵隊は単に街道を封鎖しているだけでもない。 この場合、討伐隊を編成して速やかに駆除に当たるのが常套だ。 大の大人が、それも訓練を受けた兵士が集団でいくのだ。 エリアのような魔道に通じる者が何人いるかは知らないが、魔物の一匹くらいはすぐに討伐できるのではないだろうか。 「あっ、ひょっとして大量発生とか?」 エリアの思いつきに女主人は愛想笑いを返した。 「私も見たわけじゃないけどね。馬鹿でかいグリッチリザードっていう話だよ?」 「グリッチリザード? それってこの周辺に住んでるもんでしたっけ?」 「ないね。本当ならずっと北の方にある岩場に住んでるもんだよ」 「北、北……あっちに見えた山の方ですよね? じゃああの猪みたいに人里に下りてきちゃったわけですか」  
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