‡一章‡

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  店内で指差した方向を見て女主人が頷く。 「そうかもね。つい先日向こうの方で大きな崖崩れが起きたっていうし」 住処が潰れて新しく移動してきた、といったところだろう。 よくある話だ。 「まだるっこしい……。いっそあたしが倒してやろうかしら」 「あら、スゴい自信家だね。女の子が無理しちゃダメだよ?」 「えー、でも女の子って呼ばれる歳でもありませんし」 半ば苦笑いで返す。 子どもっぽく思われることもあるが、もう22歳の大人だ。 「心配しないでも、今日にも討伐するって話だからさ。それまで待ってなよ」 言って、女主人がカップに紅茶を注ぐ。 心地よい香りを嗅ぎながら、エリアは訊ねた。 「兵隊の中に魔道士って何人くらいいるんですか? グリッチリザードって皮膚が硬くて弾力もあるから、剣じゃやりづらいと思いましたけど」 「そうなのかい? 魔道士……10人くらいはいたと思うよ。ああ、そういえば」 「はい?」 「うちの魔道士部隊に小さな女の子の魔道士が1人いるんだよ。まだ子どもなのに健気な娘でね、たしかその娘も討伐に参加するそうだよ」 へぇ、とエリアは感心した。  
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