‡一章‡

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  「ねぇねぇおばさん、その子って可愛いんですか?」 「何だい藪から棒に。お客さん女だろ?」 「いやいやいいじゃないですかー、可愛い可愛くないは全世界共通ですよ。前もって情報入ってる方が話しやすいでしょうし?」 言葉尻を疑問形で結んだエリアは鼻歌まで歌い出した。 愉快そうな彼女に女主人は呆れたような笑みを見せた。 「まさか変な趣味とかないだろうねぇ?」 「ないないゼロですってば。可愛かったらいいなっていう希望はありますけど」 「そうかい、じゃあ信じるよ」 女主人はより親しげににんまりと笑った。 別に本気で訊いたわけではないのだ。 「でもお客さん、そういうのは自分の目で確かめた方がいいと思うよ?」 「え~、そんなー!」 「そりゃ私からすりゃ自分の子どもみたいに可愛い子だよ。優しいし気立てが利くし、たまに店の手伝いもしてくれるからね」 「うわ、絵に描いたような優しい子じゃないですか。余計気になるなー」 「ははは、これ以上は言わない方がよさそうだね」 「ひっど~い。大人をからかうもんじゃないですよ?」 エリアの声にも楽しそうな感情しかなかった。 遊びに似た、たわいない語らいだ。  
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