‡一章‡

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  「よく言うよ。私からすりゃお客さんもまだ子どもだよ」 「あ、そうきます? あたしのお母さんよりおばさんの方が若いですよ」 「ならおばさんはやめないかい」 「はーい、お姉さま」 「はは、口が達者な人だね。アップルパイもうひとつ食べなよ」 「やったー、お姉さま素敵!」 両手で皿を持ち上げてパイの重みを感じた。 フォークを手にエリアは早速ひと口分を分ける。 冷めつつあるが、甘味は衰えていない。 「んー、しあわせ~」 ひと口ひと口をしっかりと味わって感想を述べる。 口の中から出たフォークをアップルパイに入れ、今度は何切れか食べやすいように切り分けだした。 「その子とも一緒に食べたいなぁ。いつには帰ってきます?」 「そうだね……今日の昼頃には出たはずだから、夕暮れ前には来るんじゃないかい」 「夕暮れっていうと、まだ結構時間ありますね。どうしよ、それまで暇だわ」 エリアはカウンター脇を見やる。 各店や畑などの位置が記された、この街の地図が大きく貼られている。 そこらの村よりは大きいが、あいにくこの街は観光する場所が少ない。 元より首都への中継地点として発展した街だからだ。  
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