‡始章‡

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  法則が加速する。 風が巻き起こり、火炎が吹き出し、稲妻が迸り、雨が降りしきり、地が隆起し、球体は明滅を繰り返した。 そこで起こる天変地異は調和の管理の下に、法則を加速させ進化を促す。 大きく咆(ホ)え、それは更に呼びかけた。 求める救いを生み出すために。 呼びかけに応え、球体に変化が生じる。 緑青の内部で眩(マバユ)い光が起こり、次第に輝きを増して形を成していく。 周囲の精霊たちが光に吸い込まれる様を確認し、それは額の上に海色の小さな球体を生んだ。 放つ。 海色の球体が緑青の球体に入り込み――光に触れた。 と、空間そのものがぶれた。 廻っていた精霊たちが散る。 七色の粒子は色とりどりに拡散し、まだなお見上げるそれへと降り注いだ。 緑青の球体、弱々しくなった内部の光を見続ける。 そのうちに光は一際強い輝きを見せ、やがて規則的な明滅を始めた。 あたかもそれは、胎動のように。 おおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ……―― 成功と知り、それはゆっくりと目を閉じた。 待とう。 己の存在を繋ぎ止めるために、この深淵で眠りながら。 緑青の中の光に望みを託し、それの姿は虚空に消えた。  
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