頼み事

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翌日の朝 6時30分 星光高校校門前 4月も後半だというのに、未だ朝の気温は低い。 朝早くからランニングしている人も皆防寒着を何かしら着ている。 そんななか、篤斗は半袖半ズボンの体操着。 さらにサングラスとマスクと帽子、手にはデジカメという、不審者以外何者でもないファッションで何かを待ち構えていた。 そう、それは裕太である。 裕太はサッカー部に所属しており、朝早くから朝練を行うという。 由紀に朝から晩まで裕太の写真を撮ってこいと頼まれた篤斗は、こうして待ち構えているのだ。 そうこうして、体をこすりながら身震いしていると、前方から自転車の音が聞こえてきた。 すぐさま草地に身を隠す篤斗。 もはや変態である。 前方から現れたのは、トラがマークのウインドブレイカーを上下に着て、籠の中にサッカーボールを入れている裕太の姿があった。 いつもはおちゃらけている裕太だけに、少し感慨深い思いが篤斗の胸に宿る。 裕太が校門を通ったことを確認すると、篤斗も迅速に後を付けて校門を通る。 ―とりあえず……。 と、試しに裕太の自転車に乗っている後ろ姿をデジカメに映し、そしてシャッターボタンを押した。
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