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願いは虚しく、男の子は後ろを振り返った。
──────ぇ?
ドクンと心臓が跳ねる。
目を見開いて、ただ息をのむ。
何で─…?どうしてここにいるの?
男の子は何も動じず、ただ私を見ている。
この距離からでもわかる。
あの自然な髪型といい、あの輪郭。
綺麗な顔立ちで、スラッとした身長。
「───いっく、ん…」
口から漏れた懐かしい名前に、慌てて両手で口を塞ぐ。
この名前、何年ぶりに呼んだだろうか。
学校では名字で呼んでいても、ふいに現れた彼に自然と言葉がでた。
早く、ここから去らなきゃ。
その場から逃げるように走り出す。
会いたくない。
会いたくない。
忘れた気持ちが蘇りそうで、溢れ出しそうで嫌だ。
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