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暫く沈黙が続いたが、不意に阿求が俺の頭を自らの胸に抱き寄せた。
突然の出来事に、俺はただ狼狽えることしかできなかった。
何?この状況。
賢「えっと、阿求?」
阿「すみません、もう少しこのままで……」
沈黙に耐えられなくなった俺が口を開くと、阿求は更に力を込めてきた。
抱き締める腕は微かに震えている。
不審に思い、力が僅かに緩んだ隙をみて顔を上げてみると瞳を潤ませながら此方を見ている阿求と目があった。
その表情を見て焦った俺は慌てて訳を聞くことにした。
どうしてこうなった……?
賢「どうしたんだ?一体」
阿「少し、不安になってしまいました」
賢「不安?」
阿「えぇ……もしかしたら賢斗さんは、外界に帰りたくなってしまったのではないかと。
それから、私と居るのがつまらないのかなって」
賢「そう言うことね」
その言葉を聞いた俺は、先程のお返しと言わんばかりに阿求を抱きしめ返した。
賢「馬鹿だな……阿求と一緒に居るのがつまらないなんて在るわけ無いだろ?
確かに昔の事を思い出して感傷に浸ってはいたが、帰りたいと思ったことは一度たりとも無いぜ?
それに」
言いながら阿求の頬に手を持っていき、此方に顔を向けさせ唇を奪う。
突然の出来事に驚いて目を見開く阿求。
が、それも一瞬。
直ぐにキスを受け入れ目を閉じた。
それから数秒間互いの唇の感触を確かめ合った後、俺から離れて笑顔を作り口を開いた。
賢「こんなに可愛い彼女ができたんだ。なのに外界に帰りたい奴が居るなら是非お目にかかりたいねw」
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