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賢「ここか……祭りの会場は」
阿「人が沢山ですね」
中央広場についた俺達は、人の多さに驚いていた。
恐らく里中の人間が集まっているのだろう、見渡す限り人、人、人の山だ。
皆一様に笑顔を浮かべ、出店を見たり友人達とお喋りしたり、恋人同士寄り添いながら回ったりと楽しそうである。
流石、年に一度のイベントと言ったところか。
はぐれると厄介なことになると踏んだ俺は、阿求の手をしっかりと握り口を開いた。
賢「はぐれたら拙いからな。
絶対に手を離さず、俺の側を離れるなよ?」
阿「それでしたら……」
言うが早いか、阿求は繋いでいた手をおもむろに離し腕を組んできた。
阿「こうすれば絶対に離れませんよ♪」
周りを見てみると、他のカップル達も同様に腕を組んで歩いていた。
なる程、真似をしたくなったと言うことか。
こいつは嬉しい誤算だな。
賢「ふ……違いねぇな。
それじゃあ行こうか、先ずは出店を一通り回ろう」
阿「はい、何処までもお供します♪」
大袈裟だな、と内心苦笑しつつ並んで歩き出す。
いままで祭りにはあまり参加できなかった阿求の為に、定番であろう店は一通り回ることにした。
手始めにリンゴ飴と綿飴の屋台に行き、二人分を購入して再び歩き出す。
勿論俺の奢りなわけだが、阿求は終始申し訳なさそうにしていた。
全く、気にする必要は無いのにな。
そんな感じで歩いていると、前方から慧音が歩いてくるのが見えた。
慧音も此方に気付いたようで、笑顔で手を振りながら近付いてくる。
挨拶をしようと俺達も慧音に向かって歩き出した。
慧「こんばんはお二人さん。
祭りは楽しんでいるか?」
賢「こんばんは。
まぁ見ての通り楽しませてもらってるよ」
阿「こんばんは慧音さん」
質問に対して笑顔で答える。
組んでいる腕を見ると、慧音も微笑みながら口を開いた。
慧「それは何よりだ」
賢「慧音は見回りか?」
慧「そうなんだ。
こういう場だとどうしてもトラブルが起きやすいからな」
やれやれという風に肩を竦めて苦笑する慧音。
自警団もあるとは言え、やはり守護者として見過ごせないのだろう。
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