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歯を喰い縛った彼から、返事は来ない。 嫌なら首くらい横に振れるだろう。 それがないなら、大丈夫かな。 と、私は恐る恐る、亮君が怖がらない様に、ハンカチを前に差しだしながら近付いた。 空地に一歩、足を踏み入れる。 湿った土と、冷たい雑草、乾いた落ち葉。 それらが私の靴に踏みつけられて小さな音を奏でた。 「ほら、これで拭きなさい。鼻水も出ている。」 私はそう言いながら、少年の顔を綺麗に拭った。 木枯らしがビュウと音を立て通り過ぎる。 私はその冷たさに、思わず肩をすくめた。 「ほら、陽も落ち掛けて冷え込んで来た。上着も着ておきなさい。」 と地面に直に置かれていた彼のジャンパーの土を軽く払い、渡した。 「……ありがとう、おじ…さん。」 先程、サンタと名乗ってしまった。 だから少年の私の呼び方はぎこちなかった。  
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