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「亮君。サンタは、居るよ。」 彼が上着のファスナーを上げきったタイミングで、私は告げた。 「おじさんまで何言ってるの。」 呆れた様に彼は私に返した。 だけど、私も引かない。 「サンタは居る、信じていればね。だけど君みたいに信じてくれなくなった時、サンタは消えてしまうんだ。だから、その存在を信じない君の元には、望んだ物が届かない。」 「えっ……。」 私の言葉に、彼は再び驚いた。 そしてこう続ける。 「何で?」 よかった、サンタに少しだけ興味が湧いた様だ。 子供らしい質問に、安心して顔が緩む。 「だってね、サンタは人間ではないから。サンタの体は、子供たちの“サンタを信じる気持ち”で出来ているからだよ。」 そして、私は彼にそう教えた。
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