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……鐘の音?
雲ひとつ無い秋晴れの空に、何処からか微かに響く鐘の音。
その音を探すように、私は空を見上げていた。
いつもなら通らない、一本奥まった通り。
今日、たまたまそこに足が向いたのは、この鐘の音に誘われたからだ。
鐘の音が近付くにつれ、それに混ざって聞こえ始める“おめでとう”と言う祝福の言葉。
「あ……結婚式」
こんなとこにチャペルなんかあったんだ……全然知らなかった。
声のする方向に向けた視線の先には、こじんまりとしたチャペルが佇んでいて。
純白のウェディングドレスとタキシードを纏い、腕を組んだ一組のカップルが、その小さなチャペルの階段を幸せそうに微笑みながら降りてきている所だった。
参列者達の手から放たれた沢山の花びらが新郎新婦に降り注ぎ、昼下がりの秋風に乗ってヒラヒラと宙を舞う。
ふと足元を見やれば、いつの間にか足を止め、その様子を眺めていた私の元にも、風に流された花びらが何枚か運ばれて来ていた。
これってもしかして、幸せのお裾分けってやつ?
そんな事を思いつつ、淡いピンク色の花びらを一枚拾い上げてみる。
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