1542人が本棚に入れています
本棚に追加
……どれくらい時間が経ったのかな。
私が目を開いた時、隣に先生の姿は無かった。
最初で最後の情事の後。
本当は眠っていた訳じゃない。
眠った振りをしていただけ。
先生もその事に気付いてたのかな。
ベッドから離れる瞬間、背中に落とされた唇の感触と“元気でな”って言葉がリアルに肌と耳に残っていて離れない。
“元気でな”が“またな”なら良かったのに……とか。
自分から終わりにしようって言っといて、そんな虫の良い事ばかり考えてしまう自分が嫌になる。
少し手を伸ばした先。
彼のいた筈の場所はまだ仄かに温かくて。
そちらに身体を移し、先生の微かな温もりを感じながら、不意に襲ってきた眠気に身を任せてみた。
「高石先生……?」
ポツリと呟いても、何の返事も返ってこない。
黙って部屋を出て行ってくれた先生の最後の優しさが、ズキリと私の胸の奥を引っ掻いた瞬間だった。
* * *
今日が日曜日だと言う事に気付いたのは、何もやる気のしない体に熱いシャワーを浴びせている時だった。
立ち上がる湯気の中でも頬だけが冷たく感じたのは、涙が溢れて止まらなかったからなのかもしれない。
最初のコメントを投稿しよう!