心の鍵

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……どれくらい時間が経ったのかな。 私が目を開いた時、隣に先生の姿は無かった。 最初で最後の情事の後。 本当は眠っていた訳じゃない。 眠った振りをしていただけ。 先生もその事に気付いてたのかな。 ベッドから離れる瞬間、背中に落とされた唇の感触と“元気でな”って言葉がリアルに肌と耳に残っていて離れない。 “元気でな”が“またな”なら良かったのに……とか。 自分から終わりにしようって言っといて、そんな虫の良い事ばかり考えてしまう自分が嫌になる。 少し手を伸ばした先。 彼のいた筈の場所はまだ仄かに温かくて。 そちらに身体を移し、先生の微かな温もりを感じながら、不意に襲ってきた眠気に身を任せてみた。 「高石先生……?」 ポツリと呟いても、何の返事も返ってこない。 黙って部屋を出て行ってくれた先生の最後の優しさが、ズキリと私の胸の奥を引っ掻いた瞬間だった。 * * * 今日が日曜日だと言う事に気付いたのは、何もやる気のしない体に熱いシャワーを浴びせている時だった。 立ち上がる湯気の中でも頬だけが冷たく感じたのは、涙が溢れて止まらなかったからなのかもしれない。
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