第一夜 疾黒

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その日本刀を手に取る… そしておもむろに鞘から引き抜く…瞬間、はっと息を飲む、呼吸をするのを忘れる 〝美しい〟 それ以外に表現のしようのない 漆黒の刃がそこにはあった 「名を黒夜〈コクヤ〉」 「黒夜…」 その美しい刃に魅入られながらその名を呟く 「本当に時間がなくなってきましたね… 質問は私の知り合いにして下さい。 彼は向こうの世界唯一の黒使いですから では詠唱に入るので話しかけないでくださいね」 そう念を押し詠唱を唱えだす 「閉じこめられし十三の時…」 詠唱を初めた時、漆黒の雷が辺りを襲う 危ない! そう思ったのもつかの間 「一瞬の黒の煌めきに魅入られし者よ…」 詠唱が進むにつれ 雷は黒い空間の一カ所に突き刺さる! ゴオォォ! と轟音を立てて〝黒〟を剥がしていく 「彼の同朋を救い出し…」 空間にヒビが入り ヒビわれが限界に達しそうになった時 ついに魔法が完成する 「彼の者に夜明けを見せよ! 黒の門〈ブラックゲート〉」 ドンッ! 衝撃が襲い ぽっかりと穴が開く…穴の向こうから 〝本当の光〟がこぼれる。 そして唐突な浮遊感… グンッと体が浮き光にすいこまれて行く! 「頼みましたよ…我が同士」 それってどういう… 言う暇もなく俺は完全に光に吸い込まれる… これが本当の物語の始まり… 自分の世界に帰るため ヘイルスのからの任務を果たすため そして…―――――
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