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「ブオオオォ!」
今、正面に立って見るとこれまで避けられたのが不思議に感じてくる…
イノシシもどきの目を真っ直ぐ見据える…
感じる…あいつは俺を殺そうとしている
威圧感、殺気、それを前にして体が縮こまる
右足が鈍い痛みを訴える。
状況が…
本能が…
告げる絶対的な死
でも…
「らぁ!」
まだ諦めない!
雄叫びを上げてマイナスなイメージを捨てる
集中しろ!
居合いで頭においていいのは、
ただ切る相手のみ
力を抜いて
間合いに入った瞬間に
刀を振るう…それだけだ!
覚悟を決めろ!
切ることだけを考えろ!
敵は…イノシシ…獣
俺は…人間…
勝つのは…
「俺だあぁ!」
俺の声を合図にしたように敵が迫る。
俺に迫るただ純粋な殺意
間合いに入るまであと三秒もないだろう…
二
一
〝相手も生き物、切ってもいいのか?〟
ふと頭をよぎるそんな言葉…それがタイミングを狂わせた…
刀が振るわれる…
額の角を切り落とす。
だが
それだけ
あいつの突進は続いている
あと数瞬もしない内に
俺は死ぬだろう…
周りがやけにスローに見える
ぶつかる…
死を覚悟し、目を閉じた
ザンッ
「見事な居合いだ… だが、迷ってはいけないな、少年」
声が、聞こえた。
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