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『舞………蘭ちゃん?』
カラン…と、扉が開いた音と共に驚いたような声が聞こえて、
思わず手を握りしめてしまった。
『アキ!もぅ、どこ行ってたのよ。舞待ちくたびれちゃった』
『あ、ごめんごめん。イズミがさー』
あきちゃんが俺に気づいて近づいてきたのを見て、舞ちゃんはあきちゃんに抱きついた。
俺に冷たい意味ありげな瞳で一瞥すると、カウンターから一番遠いボックス席に引っ張っていく。
《余計な事いわないでよ》
…そう訴えかけるような。
鼻につくのは、舞ちゃんがつけていたであろう香水。
その香水が、いつから今の香水にかわったのか…
あきちゃんが知らないと思っているの?
舞ちゃんの香水と、似ているようで違う
もうひとつの香り…
俺は言わないよ?
………言える訳ないから。
だって言ったら、
それを認めた事になってしまうから。
あきちゃんが知ったら…
気づかないふりをするあきちゃんが…
壊れてしまう。
あきちゃんは、
俺とは違うから…
笑っていてほしいから…
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