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ふと、目を開けると室内は薄暗く…カーテンの隙間からは満月が輝いていた。
家の中は静かで、ベッドに凭れるように…
…………父さんが寝ていた。
俺の手を握ったまま、うつらうつら船を漕ぐ頭。うっすら隈がある目元。心なしかまた少し痩せた気がする。
…母さんが死んでから、更に仕事に打ち込むようになった父さん。
…わかっていた。
父さんがどんなに悲しい気持ちでいたか。
母さんに似ている俺をみて、思い出すのが辛いと…
…俺を一人にするのは、
俺があまり他人を受け入れられないから。
本当は、お手伝いさんを雇うかと何度も聞かれた。
母さんが入院した頃から…
でも、何でもできるからいらないと断った時…
父さんは少し寂しそうに笑った。
俺が父さんを頼らないのを知っているから…
…ごめんなさい。
ありがとう…父さん。
俺、ちゃんとケジメつけるから…
自分の事は自分で…
だから…
…泣かないで
父さんの目尻にたまっている涙を見ると、胸が苦しかった。
大丈夫だよ…
もう、逃げないから…
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