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「……………やっと、平穏になったのにな…」
蘭の冷たい手を暖めるように擦りながら、呟いていた。
足と腕、手首、あばら骨の骨折、全身打撲…
…それと
身体の傷は日に日に回復はしていくのに、蘭の心の傷は深くなっていくばかりだった。
時々思い出したように瞬きをするだけで、まるで人形のように動かない蘭。
虚ろな瞳に光りはなく、何も映さない。
……心が死んでいた。
何で蘭がこんな目に会わなければいけない?
蘭が何をした?
ただの寂しがり屋の甘えん坊な餓鬼じゃないか。
……………
……蘭の瞳に光が戻ったのは、あの日から半年後だった。
闇の中にいた蘭が出した答えは…
…………記憶の消去。
"白夜"として、ライに関わった全ての記憶が失われていた。
……当然、
俺等も。
予想外なのは、神楽達まで覚えていなかった事だ。
…それならば、
俺等が覚えていればいい。
もう二度と、悲しませないように…
誰にも蘭の事を教えない。
俺達だけ…
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