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◆side,―― ◆
鈍い音が室内に響いた。
咳き込み血を吐いた來臥を心配する人はいない。
荒い息の葵が更に來臥に掴みかかろうとするのを制するかのように、静かに声がかかった。
「……葵。いくらライを殴ったって、蘭ちゃんは元に戻らないよ」
「………」
各務の呟くような声に、葵は拳を握り締めて深い深い吐息を吐き出し…
ベッドに歩みより、蘭珠の頬に触れて髪を撫でた。
「…各務。ランはいつ…目覚めるんですか…」
「……わからない。昨夜は一晩だったけど…明らかに昨夜より精神的に傷ついてるから。
……あの時は半年、このままだったんだ」
「一生壊れたままかも知れないって、医者に宣告されたがな」
付け足すような神楽のその言葉に、葵の瞳が苦痛に歪んだ。
「…昨夜とは…どういう事ですか…」
小さく溜め息をはくと、神楽は昨夜あった事を伝えた。
その場にいた誰もが口を閉ざし、重苦しい空気が漂う中…
突然響いた低く冷たい威圧的な声に、彼らは息を呑んだ。
「随分面白れぇ話だな。そんな報告受けてねぇなぁ。ちゃんと説明してくれんだろうな、あ?」
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