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◆side,RANJU◆
………あれは…誰?
ボロボロな衣服に虚ろな瞳…
ふらふらしながらも歩道橋を歩いているのは…
あれは…
…あぁ、俺か。
何であのとき、振り向いたんだっけ…?
背中を押されたから?
名前を呼ばれたから?
人の気配を感じたから?
…それとも
わかっていたから…?
嫉妬と憎しみが混ざった瞳と目があった時…
自分から望んだから?
………
あぁ…そっか。
おれは…
舞ちゃんの後ろに見えた赤い月に、
逝きたかったんだ…
「…!……ん!……ら…!…蘭!大丈夫か!」
………
意識が急に浮上して、目を開けたら…
目の前に、ろうちゃんの闇色の瞳があった。
冷たいのに暖かい瞳は、心配そうに揺れている。
「ハァ…ゆっくり深呼吸しろ…そう…」
そういわれて、自分が息苦しい事に気づいた。
俺を抱き締めて背中をトントン叩く手に合わせるように、
浅い呼吸を少しずつゆっくりと息を吸えば、徐々に落ち着いてくる鼓動に瞳を伏せた。
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