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近づいてくる先輩が大事そうに腕に抱いている蘭を見ると、不安と怒りが込み上げてくるのを…
拳を握って耐えた。
銕先輩は、俺の姿を捉えると小さく溜め息をはいて…
………
その溜め息はなんだ?
俺がいたら駄目なのかよ…
普段ならこんな事思いもしないのに、黒い感情が心に渦巻いていく。
「………タイミングいいな………話ある」
何故か俺について来いという先輩に、勢いを削がれてしまった。
先輩の心配そうな蘭を見る瞳に、
まさか病院で悪い結果がでたんじゃないか…
怒りより不安が渦巻き、先輩の後を追うようにエレベーターに乗り込んだ。
「…………浅野が同室だったか」
「え?…あ、はぁ…」
黙り込んだと思ったら、いきなり口を開く。
正直にいうと…
俺には銕先輩が何を考えているかわからない。
いや、俺だけじゃない。
先輩が醸し出す雰囲気に、誰も近づけない。何を考えているのか…誰も理解できないしさせないからだ。
必要以上に喋らない、つるまない、笑わない。
だから驚いた。
図書室で蘭といた先輩は、優しい笑みを浮かべていたから。
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