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「!」
「――――ん!」
不意にふっと周りが消えて…
俺は
闇に横たわっていた。
身体を這う手も痛みも
何もかもなかったかのように、全てが無になった。
その闇に微かに聞こえる声…
誰かを必死に呼ぶ声が聞こえる。
その声がどんどん小さくなり、意識が薄れていく。
「蘭!」
はっと目を見開いたら、目の前に心配そうに顔を歪めるなっちゃんと…
泣きそうな顔の愛結と
難しい顔のけんちゃんが視界に映った。
状況がよくわからないけど、それより何より…
………苦しい…!
「蘭!ゆっくり息をするんだ!顕彰、袋!」
上手く息が出来なくて、愛結が背中を擦ってくれても身体が震えていた。
なっちゃんが袋を俺の口に当てて、一緒に呼吸を誘導してくれた。
よく見えない視界でも、今自分が何処にいるのかは…
わかってる。
だって、ここは…
俺の部屋だから。
だから、きっとろうちゃんが送り届けてくれたんだろう…と、
働かない頭で、結論づけて…
胸に沸き上がるモヤッとした物から、目を背けた。
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